右手に剣を、左手に君を
やがて渚の呼吸が落ち着いてくると、
リカさんが口を開いた。
「ねえ、善女。海に帰りましょう?
龍神剣を産んだりしたら、
こんどこそ消滅してしまうわよ」
渚は、俺の胸からゆっくりと顔をあげた。
「愛しいのはわかる。
でも、あなたは神、彼は人間。
空亡に滅ぼされるしか道のない、人間なの」
「そんな……」
渚が悲しそうにうつむく。
俺は代わりに、海神に質問した。
「あの……龍神剣を使う以外に、
空亡を倒す方法は、無いんですか?」
「無礼よ、御津恒一」
「だって、リカさん。
俺は、渚が好きなんです。
そばにいたい。
そのためには、空亡を倒さなければ」
まっすぐ見つめると、リカさんは口をつぐんだ。
「リカさんだって、一度は認めてくれたじゃないですか……」
そう、今朝までは、俺たちに力を貸してくれた。
俺たちの仲を、否定したりはしなかったのに。