右手に剣を、左手に君を


「……できぬのだ」


「え……っ?」



海神の声は、いっそう低くなった。


その眉の間には、こいシワが刻まれている。



「できないのだよ。

完全復活した空亡に、対抗する力が、我々にはないのだ」



渚が大きな目を、ますます大きくする。


なに……なんだと?


神さえ、空亡に敵わないだと……?



「我々は、混乱に満ちたこの世界を支えるのに、

手いっぱいなのだ」


「…………」


「そして、人間が好き放題してくれたおかげで、

現在、精霊のほとんどが消滅した。

この星をなんとか支えている我々の力も、

もう底を尽きかけている」



なんだって……。


結局、人間の自業自得ってことかよ。



< 349 / 449 >

この作品をシェア

pagetop