右手に剣を、左手に君を
どうしたらいい。
どうしたら……。
唇を噛んでいたら、隣で小さな声がした。
「私は、海には帰りません」
はっとして、そちらを見る。
渚の目には、強い決意が宿っていた。
「空亡を倒せるのが龍神剣だけだというなら、
その望みを繋ぐまでです」
「善女……!
いい加減にしなさい!
消滅するかもしれないのよ!?
生き残ったって、人間と一緒に生きていたら、
きっと後悔する日が来るわ。
その男と一回でも契れば、あなたは……」
「いいの、お姉さま」
リカさんの説得は、何の意味も持たなかった。
変なところで頑固な渚は。
しっかりと、俺の手をにぎった。
「神でも人間でもなくていい。
私には、私を守ってくれるこの左腕さえ、あればいい。
他のものはいらない。
どんな痛みを受けたって、かまわないの」