右手に剣を、左手に君を


俺は、彼女の身体をもう一度抱きしめる。


渚も、ゆっくりと俺の背に両腕をまわしてきた。



「約束してくれ……」


「うん?」


「絶対に、死んだりしないと……」


「死ぬ……なんて、人間みたいな表現だね」




切なげな鼓動が、胸から伝わってくる。



「ごまかさないでくれ。

約束してくれ。

龍神剣は、産まないと」


「……さっき、言ったでしょ?

そうしなければ勝てないのなら、私は産む」


「渚!」



身体を離し、その青い目を見つめる。


その瞳は、まったくブレなかった。



「龍神剣を産んだって、消滅するとは限らないじゃない?」


「だけど……千年前は……」


「千年前は、千年前。

牢屋にコウくんが助けに来てくれたとき、言ったでしょ?

今なら、何でもできそうだって」



渚は笑顔を崩さないように、気を配っているみたいだった。


不器用なくせに、必死で俺を安心させようとしているのだろう。





< 355 / 449 >

この作品をシェア

pagetop