右手に剣を、左手に君を
「コウ!渚!」
玄関に出てきた健太郎が、叫んだ。
自宅には、ばあちゃん、雅、健太郎がいた。
神社にも自宅にも、もう人はいなかった。
「なんで帰ってきたんだよ!
あいつらは町中を、お前達を探して走り回ってるんだぞ!」
「知ってるよ。
ここに来るまでに、そんなやつらを見かけたから」
「かくれんぼしながらだから、遅くなっちゃったー」
意外にのんびりしゃべる渚に、全員が呆れ顔をした。
「どうして、また……」
雅が話を戻す。
「あぁ、よく考えたんだけど……
俺たちだけ逃げても、
結果、人間の世界が滅びたら、どうしようもないなって」
「ねー♪」
「だったら奇跡が起こることにかけて、
戦った方がいいんじゃないかって」
「ねー♪」
一言しゃべるごとに、渚がマヌケなあいづちをうつ。
皆は、もう呆れ顔を通り越して、苦笑していた。