右手に剣を、左手に君を
放課後……。
なんとか最後まで授業を終えた俺達は、そろって住吉神社に帰る事にした。
「なんとかなったな……」
「ふえぇ、疲れたよぉ~」
渚はまた、俺の腕に巻きついてきた。
雅が苦笑する。
「すっかりなつかれたな」
「神様になつかれるって、どうなんだよ……」
「良いじゃねーか。まんざらでもない顔してんぜ?」
「ばっ、誰が!」
健太郎が、明るく笑う。
さぁ帰ろうとした時……。
「ミ・ト・く~ん♪」
クラスメートに声をかけられてしまった。
「米倉……何?」
「やだぁ、愛ちゃんってよんでよ~」
「……米倉。用がないなら、帰るけど」
「んもう!相変わらずイケズなんだから!」
クラスメートの、米倉 愛(ヨネクラ・アイ)。
色が白く、背が高い美人だ。
普段からなれなれしい。
俺は人をバカにしたような話し方のこいつが、好きじゃなかった。
しかし米倉は何も構わず、笑いながらずいずいと近くに寄ってくる。
「ねぇ御津くん、渚ちゃん紹介してよ♪」
「は?」
「だって、めっちゃめちゃ可愛いじゃない~♪
あたし、可愛い女の子、だ~い好きなのっ!」
米倉はキャハッと笑う。
ポニーテールにした黒髪が、ぶるんと跳ねた。
渚を見ると、やはり米倉を警戒してぷるぷるしている。
「……ごめん。ちょっと疲れたみたいだから……。
また今度、遊んでやってくれ」
「えぇ~っ?」
米倉は不満気に眉間にシワを寄せた。
たまにアイドル好きな女がいるが、こいつもその口か。
渚と仲良くしようとしてくれるのはありがたいが、ボロが出そうで怖いな。