右手に剣を、左手に君を
「空亡……っ!!」
ついに、人間界に姿を見せてしまった。
「そんな……!
どうして……!」
渚が悲鳴のような声を出す。
「神たちが静かにしているのを見て、
龍神剣はいらないと思ったのかもしれない。
あるいは、渚をおびきよせるためか……」
「短気な奴だな!
自分で3日とか言ったくせに!」
健太郎がぶーぶー文句を言う。
しかし、事態はよほど深刻だった。
上空に浮いた空亡の赤い目が、
こんなに離れていてもはっきり見える。
町の人間があれに気づいたら、
それこそパニックだ。
収集がつかなくなる。
「っていうか、町の人間は無事なのか!?」
健太郎が叫び、ハッとする。
そうだ。
立っていられないほどの地震があったのに、
周りの民家からは、悲鳴一つ聞こえてこない。