右手に剣を、左手に君を
「おかしい……!」
雅もその異常に気づいた。
「もっと、騒がしくなっていいはずだ。
火事が起きていないのはありがたいが、
窓の明かりが一つもつかない」
「停電じゃねーのか?」
「それにしたって、懐中電灯の光くらい、見えるだろう。
怪我人だっていたはずなのに、救急車も来ない」
そんな議論をしているうち。
近くにあった家の窓に、青白い光が見えた。
「あ、ほら、今見え……」
そう言いかけた渚は、途中で声を失った。
その光は、窓をすりぬけ、上空にあがっていく。
二つ、三つと……。
その数は、次第に増えていった。
点々と存在するそれぞれの民家から、
同じような光が、打ち上げられた花火のように尾を引く。
「魂が……!!」
それは、間違いなく、学校で見たものと同じだった。
夜空を明るく照らし始めた、無数の光。
それは、人間の魂だったんだ。
空亡が、ついに人間達を滅ぼし始めた──。