右手に剣を、左手に君を


「そんなこと、できるわけないじゃない」


「あきらめろ。

もう今夜で、この町は消えるのだ」



聞きなれた声が、背後からした。


そちらを、振り向く。


そこにはやはり。


玉藻と、迦楼羅がいた。


二人とも俺たちと一緒で、回復しきっていない感じを受ける。


しかし、これから起こる事を期待してか、

その目はぎらぎらと輝いていた。



「私達の仲間を、そしてこの星を、苦しめ続けてきた人間達。

滅びるが良いわ」



玉藻が冷たく笑う。



「お前達を責めた人間の様子、見せてもらった。

なぜ、まだ戦う。

人間など、本当に救いようのない生き物ではないか」



迦楼羅が呆れたような顔をしていた。


何か言い返そうと思った途端。


今度は海の上から、声がかけられた。



《三剣士よ……

そして、龍神の姫よ……》



今までと少し違う響きのそれに、俺たちの警戒は強まる。


まるで、大人が小さな子供をあやすような声に聞こえたからだ。





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