右手に剣を、左手に君を
「無理言うなよ、愛」
また後ろから新手が現れる。
隣のクラスの、尾野(オノ)だ。
雅よりも背が高く、威圧感のある男だ。
やけに彫りの深い顔立ちだが、純日本人らしい。
町の外から来た米倉と同郷らしく、よく二人でいるのを見かける。
しかし、付き合っているわけではないそうだ。
「なによ英明(ヒデアキ)。
アンタだって渚ちゃんとお近づきになりたいでしょ?そうでしょ?」
「あぁ、この子が噂の転校生か。
確かに……お前の好みだな」
「そうなの、久々ドキュンなのっ♪」
米倉のキャピキャピした様子に、男は全員ドン引き……。
こんなに綺麗なのに彼氏がいないのは、米倉が女が好きだからという噂があった。
「コウくん」
渚がぷるぷるしながら、俺の制服をつまむ。
「ん?」
「帰りたい……」
本当に小さな声で、彼女はつぶやく。
「あ、あぁ。じゃあな、本当に具合が悪いみたいだから」
「ほら、愛。
解放してやれよ」
「そっかぁ、お大事に」
米倉は尾野の横で、名残惜しそうに手をふった。