右手に剣を、左手に君を


やっと学校を出て、俺達は歩きだした。



「えっらい注目浴びてんなぁ」


「学校ではあまり、龍神や妖の話をしない方がいいな」



健太郎と雅が言う。



「てか、もう学校は行かない方が良いだろ。

神社でおとなしく留守番してろよ」


「ふぇっ、コウくんの意地悪!」



渚は俺の手を離し、パッと雅にはりついた。


……面白くない。



「そーだよコウ、一人でずーっと神社にこもってろって言うのか?

可哀想だろ!」



健太郎が調子を合わせる。



「誰もずーっとなんて言ってない。

ばあちゃんとたまに外に出るとかは構わないけど、学校は本人も疲れるだろ?」


「でも私、皆と一緒がいい」


「あーそう。じゃあ勝手にしろよ」



相変わらず雅にはりつく渚に言ってやり、先を歩いていく。


背後から、ぶうぅとブーイングが聞こえた。



「…………?」



雅や渚じゃない。


誰かが、俺達を見ている……視線を感じる。


俺は背後を振り返った。


するとベーッと舌を出していた渚が驚いて、それを噛んでしまった。



「いひゃあぃ~」


「野田……」


「はぁ?」



呟いた俺の声に気づき、健太郎も背後をにらむ。


俺達の何メートルも後ろ……。


野田が、スマホをかまえて立っていた。


畑以外に何もない田舎道で、彼の姿は丸見えになる。


気づかれたと思ったのか、野田はくるりと背を向けて、走っていってしまった。



「あの子……」



渚が昼間も見た相手を、ぼんやり見送る。



「野田なのだ!
なんつって、ハハハ」


「健太郎……」



雅が健太郎の寒いギャグに、凍えそうになる。



< 38 / 449 >

この作品をシェア

pagetop