右手に剣を、左手に君を
やっと学校を出て、俺達は歩きだした。
「えっらい注目浴びてんなぁ」
「学校ではあまり、龍神や妖の話をしない方がいいな」
健太郎と雅が言う。
「てか、もう学校は行かない方が良いだろ。
神社でおとなしく留守番してろよ」
「ふぇっ、コウくんの意地悪!」
渚は俺の手を離し、パッと雅にはりついた。
……面白くない。
「そーだよコウ、一人でずーっと神社にこもってろって言うのか?
可哀想だろ!」
健太郎が調子を合わせる。
「誰もずーっとなんて言ってない。
ばあちゃんとたまに外に出るとかは構わないけど、学校は本人も疲れるだろ?」
「でも私、皆と一緒がいい」
「あーそう。じゃあ勝手にしろよ」
相変わらず雅にはりつく渚に言ってやり、先を歩いていく。
背後から、ぶうぅとブーイングが聞こえた。
「…………?」
雅や渚じゃない。
誰かが、俺達を見ている……視線を感じる。
俺は背後を振り返った。
するとベーッと舌を出していた渚が驚いて、それを噛んでしまった。
「いひゃあぃ~」
「野田……」
「はぁ?」
呟いた俺の声に気づき、健太郎も背後をにらむ。
俺達の何メートルも後ろ……。
野田が、スマホをかまえて立っていた。
畑以外に何もない田舎道で、彼の姿は丸見えになる。
気づかれたと思ったのか、野田はくるりと背を向けて、走っていってしまった。
「あの子……」
渚が昼間も見た相手を、ぼんやり見送る。
「野田なのだ!
なんつって、ハハハ」
「健太郎……」
雅が健太郎の寒いギャグに、凍えそうになる。