右手に剣を、左手に君を
「皆の友達……じゃ、ないの?」
渚の質問に、俺達はそろって首を横にふった。
「全然。あぁいうキモいやつだから、ある意味有名だけど……人気はないな」
「キモい?」
「可愛いからって無断で写メ撮ったりさ。
普段はアイドルとかアニメの女の子に夢中なんだよ」
「???」
「健太郎、難しい単語が多すぎる」
俺と雅は苦笑した。
野田は、この町で産まれ育ったから。
小学校も中学校も、一緒だった。
幼い頃から、他人のあげ足をとったり、小さな失敗を上げ連ねたりするのが得意な性格で。
見た目はヒョロリとして、いつもレンズのコートがはがれた汚いメガネをかけ、髪はだらしなくのびていた。
いつの間にか、彼自身が、周りに疎んじられ……。
去年は隣のクラスだったので、よく知らないが。
イジメみたいな事をされたりも、したらしい。
「……なんか、寂しそうだね……あの子……」
渚が呟いた。
「……そうだな」
俺は短く、同意した。
すると健太郎が鼻息を荒くする。
昼間の盗撮未遂で、野田に対する不信感がマックスになっているらしい。
「ありゃー、自業自得!
小綺麗にしてニコニコしてりゃ、友達なんかすぐできるんだよ!
あいつ、好きこのんでオタクなんだもん、ムリムリ」
「健太郎、世の中にはお前みたいにできないやつもいるんだ」
「何だよ、じゃあ雅はあいつと友達になりたいか?」
「いや……」
たしなめたはずの雅は、正直に困った顔をした。
「そうだろ。
綺麗事言ったって、何もしてやれないんだから。
だったら同情するなよ」
健太郎はキッパリと言った。