右手に剣を、左手に君を
雅は静かに笑って答える。
「そうだな、健太郎の言う通りだ」
「だろ?そーだよ、俺は正しいんだ」
雅の言うことも間違ってないと思う。
しかし、自分を良く見せようとしない、他人にやたらと同情しない、素直な健太郎を。
俺達は、信頼していた。
渚はそんな俺達を見て、黙って微笑んでいた。
そして、そのまま和やかに神社に帰れると思ったのだけど……。
神社の近くの森の入口で、渚の足が、ピタリと止まった。
「…………」
「どうした?」
渚は、ふんふんと鼻を鳴らす。
「妖の、においがする……」
「マジかよ!」
健太郎が目を丸くした。
渚は険しい顔で、さらに気配を探る。
そして、言った。
「……人間が……襲われてる……!」
ざわ、と森の木々が応えたような気がした。
「……行くぞ!」
俺達は、妖の気配を追って、森の中へ入っていった。