右手に剣を、左手に君を
「いや、俺たちも行く」
雅が、剣を杖のようにして立ち上がる。
「いいだろ、渚。
俺たちも背中に乗せてくれよ」
健太郎が、傷の痛みをこらえて無理やりに笑った。
「ふええ、無理だよお、二人とも」
「そうよ。先に傷を癒しなさい」
二人の龍神の姫に拒否され、
雅と健太郎はしぶしぶ陸に残る事になった。
「行こう、渚」
俺は渚の右手を握った。
渚は、うなずく。
そして、深呼吸を一つ。
深く息を吐きながら、再び龍神の姿へと変身した。
尾に負った傷は、大したことないようだ。
少しずつ、しかし人間より明らかに速いスピードで、
傷は徐々にふさがりはじめていた。
《お姉さま……あとはよろしくお願いします》
そう言うと、リカさんは黙ってうなずいた。
俺は、渚の背に飛び乗る。
《今度こそ……》
彼女はそうつぶやくと、再び暗い空へと、舞い上がった。