右手に剣を、左手に君を
あなたのために


《忌々しい……倶利伽羅竜王から始末してやろうか》


空亡の暗い声が、俺たちの背筋を震わせる。


《そんなことはさせない……!

空亡、私達が相手です!》


龍の姿の渚の、大きなのどがグルグルと鳴った。


《……こりないやつらめ。

この世界の支配者は、私だ!

思い知るがいい、間抜けな神と、愚かな人間達よ!!》


くわ、と赤い目の瞳孔が開く。


同時に、邪悪な妖気が暴風となって、俺たちの頬を打った。


《滅びよ!!》


空亡の渦から、巨大な魍魎の首が迫る!


《そんなもの!》


渚の身体から、清浄な霊力が発せられた。


大きな波音がして、足元を見る。


すると、海から水柱が何本も立っていた。


《洗い流してやるんだからっ!》



ザアアアアアア!!


水柱は、それぞれ巨大な槍となって、魍魎の首を突き刺す!


水柱に貫かれた首たちは、ブシュウと音を立て、

黒いもやとなり、空へ帰っていった。


「よし!」

「さすが、神様!

やればできるじゃねーか!」


地上から、歓声と野次が飛んでくる。


《おのれ……!》


渚の神の力を、始めて目の当たりにして、

珍しく空亡に焦りのようなものが見えた。



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