右手に剣を、左手に君を
《ならば、これでどうだ!》
空亡の焦りは、そのまま凶暴性に繋がっていく……。
渦の後の、黒く巨大な翼がはためいたかと思うと──
ゴオオオオオオオオオ!!
赤い目から、迦楼羅の火炎地獄が起こる!
地獄の炎は壁となり、俺たちの目前に迫った。
「渚!」
《はい!》
空亡のアホ。
こいつを、誰だと思っている。
誇り高き、龍神の姫君だぞ!
《消しちゃうから!!》
渚はそう言うと、ガボ、とその首を海に突っ込み……。
ざば、とでて来た。
そして。
ぶしゅううううううう!!
龍の姿のまま、その大きな口から、
火の壁に向かって、大量の水を吐き出した!
「うわー」
「さすが、龍神」
少し引き気味の友人達の声は、聞こえなかったことにする。
とにかく渚は、そうして火炎地獄を消失させた。
《ぐっ……》
「すごいな、渚!」
《へへーん》
そうほめて、広大な背中をなでると。
渚は嬉しそうに、長いひげを揺らした。