右手に剣を、左手に君を


《こんな程度で終わると思うか!》


次々に攻撃をよけられた空亡の声が、荒れる。


そうだ。


よけることは出来ても、こちらから攻撃しなければ。


防御だけで、霊力が削られていってしまう……。


しかし空亡は、こちらから仕掛ける猶予を与えてくれそうになかった。


今度は、渦から出た九本の白い尾が。


ざわざわと、空を揺らした。


「何が来る?」


《もしかして、玉藻の……》


渚が言いかけたとき、それは放たれた。


邪悪な、精神の波。


それは言葉を伴ってはいなかったが、俺たちの脳を確実に揺らす。


頭をわしづかみにされて揺らされるような衝撃に、

思わず身がすくむ。


「くっ……」


《コウくん、しっかりして!》


その見えない波は、俺の脳に、

「あきらめろ」

「あきらめろ」

と、繰り返す。


《もろい人間よ……

お前など、これだけで殺せるわ!》


キイン、と強烈な耳鳴りが、俺を直撃する。


「死んでしまえ」

波は今度は、そう言っていた。


本当に、身体の力が抜けていく。


しかし、そう簡単に屈服するわけにはいかない。







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