右手に剣を、左手に君を


「うる……さいっ!」


死ぬわけにいくか。


こんなもの。


精神波なら、気の持ちようでなんとかなるはずだ。


渚も、俺の下で強張っている。


俺は耳を押さえていた手を離し、剣をにぎりしめた。


その時。


俺たちの身体の自由を奪ったつもりの、空亡の渦から。


また、魍魎が頭をのぞかせた。


それらは、俺たちの喉を狙う!


「させるかっ!」


なかなか動けない渚の代わりに、今度は俺が。


俺が、反撃しなければ……!


しびれる手首に、むりやり力を送る。


すると、雷鳴が、頭上で喉を鳴らしはじめた。


「……雷(いかずち)っっ!!」


まとわりつく精神波を振り払うように、

一気に、剣を上空に突き出す!



ドガアアアアアッ!!



雷は、魍魎の首に一つ残らず、直撃した。


断末魔の声を上げながら、魍魎たちは黒い霧となり、空へ返っていく。


《すごい!コウくん、かっこいい!》


いつの間にか精神汚染が解けた渚が、脱力するような声をかけてきた。


そう、空亡は、今の俺の攻撃に驚いたらしく。


精神波を、止めてしまったんだ。





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