右手に剣を、左手に君を
「コウ!!」
「善女!!」
「早く、引き上げろ!!」
失いかけた意識の途中、三人のそんな声が聞こえた。
多分俺は、波打ち際に落ちたんだろう。
全身を引き裂かれるような痛みの中、
背中に潮の香りと、水で濡れた嫌な感触があった。
「なぎ、さ……」
ずるずると、雅に浜へ引きずられる途中、
だんだんと意識が戻ってくる。
俺はすぐに、目で渚の姿を探した。
すると、すぐ隣に、人間の姿に戻った渚が、
リカさんと健太郎の手によって横たえられた。
「コウくん……」
小さな声に、安心した。
まだ、生きてる。
たとえ、傷だらけだろうと。
渚の頬には、その美しい顔に似合わない、残酷な切り傷がついていた。
「うぐ、あ、……っ」
すぐに身体を起こそうとすると、とんでもない痛みが全身を襲った。
それでも俺と渚は、何とか上体を起こす。
「よくも、善女を……!!」
リカさんは、怒りに燃えた目で、空亡をにらんだ。
「くっそ……今の攻撃も効かないのかよ!」
「もう、全員でいくしかないな」
まだ傷がふさがっていない仲間達も、上空をにらむ。