右手に剣を、左手に君を


《ふ、ふふ……。

もう、あきらめろ。

神も、人間も、誰も私にはかなわぬ……》


空亡の不気味な笑い声がふってくる。


「それは、どうかしら」


リカさんが、自らの霊力を集約させる。


その身体が金色に輝きはじめた。


龍の姿になろうとしているのだ。


「リカさん、俺たちも」

「お願いします、倶利伽羅竜王」


健太郎と雅も希望を捨てず、まだ戦いに赴こうとした。


そんな三人を。


「待って……みんな」


渚の小さな声が、止めた。


「渚……?」


全員が、渚を見つめる。


渚は、小さな声で、話をはじめた。


「もう、やめよう。

皆、あきらめて。

あいつの言うとおり。

もう、神も人間も、あいつには勝てない」


「はぁ!?」


「何を言うの、善女」


信じられない渚の発言に、全員が一瞬、闘志を奪われた。


あきらめるだなんて……。


しかし雅だけは、静かに聞き返した。


「俺たちがあきらめて……お前はどうするんだ?」


と。


< 410 / 449 >

この作品をシェア

pagetop