右手に剣を、左手に君を
《ふ、ふふ……。
もう、あきらめろ。
神も、人間も、誰も私にはかなわぬ……》
空亡の不気味な笑い声がふってくる。
「それは、どうかしら」
リカさんが、自らの霊力を集約させる。
その身体が金色に輝きはじめた。
龍の姿になろうとしているのだ。
「リカさん、俺たちも」
「お願いします、倶利伽羅竜王」
健太郎と雅も希望を捨てず、まだ戦いに赴こうとした。
そんな三人を。
「待って……みんな」
渚の小さな声が、止めた。
「渚……?」
全員が、渚を見つめる。
渚は、小さな声で、話をはじめた。
「もう、やめよう。
皆、あきらめて。
あいつの言うとおり。
もう、神も人間も、あいつには勝てない」
「はぁ!?」
「何を言うの、善女」
信じられない渚の発言に、全員が一瞬、闘志を奪われた。
あきらめるだなんて……。
しかし雅だけは、静かに聞き返した。
「俺たちがあきらめて……お前はどうするんだ?」
と。