右手に剣を、左手に君を


俺の迷いを見透かした渚は。


上体を起こしたまま、ぼんやりしている俺の手を、

優しく、にぎった。



「大丈夫……

きっと、大丈夫だから……」



震える声。


それが、多分、

大丈夫ではないことを物語っていた。


それでも渚は、俺に訴える。



「ね?

コウくんのために、産むんだよ。

コウくんにしか、使えないの。

だから……あとちょっとだけ、がんばってくれる?」



さっきの攻撃で、霊力ばかりか生命力さえギリギリの俺は、

呼吸さえ整わない。


それに加えて、この言葉……。


傷ついていないはずの胸が、ぎりぎりと痛んだ。



「……渚……」


「何……?」


「死ぬ、なよ……」


「…………」


「お前、言ったよな。

好きな人が死んだ後の世界で、一人で生きるのは、悪夢だって。

俺にそんな悪夢、見せたりしないよな?」



その顔を見つめると。


渚の青い目が、ゆらりと揺らいだ。


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