右手に剣を、左手に君を
「あ、あたりまえだよ……」
渚は、無理に笑った。
けど、全然出来てない。
不自然に、頬が引きつっただけだった。
「バカ……」
喉の奥が、つんと痛くなった。
俺は、涙をこらえるように……。
渚の身体を、引き寄せた。
もう、何を言っても……。
君は、聞いてくれないね。
悲しいほど素直で、まっすぐな君は。
それしかないと、さとったら。
本当に、それしかできないんだよな。
「コウくん……」
「死ぬなよ、絶対、死ぬな。
約束だからな」
「うん……」
渚は、弱った両腕で、俺にしがみついた。
本当は、怖い。
その思いを、隠すように……。
そして。
渚は、身体を離して、よろよろと立ち上がった。
俺も、剣を杖にして、渚を支えるように立つ。