右手に剣を、左手に君を
男女を横取りされた妖が、こちらに気付いた。
渚から離れるように、俺達は自ら妖に向かっていく。
《カエセ……》
妖が、うなった。
その身からは、禍々しい妖気が立ち上っている。
「返したら、どうするつもりだ」
《食ウ……人間、食イタイ》
「……じゃあ、返せないな」
グルルルル!!
怒った妖の喉が、獣みたいな音を鳴らした。
殺気が、爆発的に濃くなっていく。
《返セ!!》
「返すか、バーカ!!」
襲いかかってきた妖に、健太郎が怒鳴った。
妖はそれぞれ、日本刀みたいなものを振りかざす。
一人、一体ずつだな。
俺達はそれぞれ剣をかまえた。
森が、震える。
戦いが、始まった。