右手に剣を、左手に君を
《消え去るがいい!!》
空亡のまわりに集約された、邪悪な妖気は……。
巨大な、竜巻となった。
ぱくりと、口をこちらに向かって開いている。
「俺は、死なない……!!」
人間世界を元に戻すため。
仲間を守るため。
家族の元へ、帰るため。
大切な人と、一緒に生きていくため。
空亡に、俺の声は聞こえたのか、聞こえなかったのか……。
返事は、なかった。
その代わり。
渦の中の赤い瞳が。
くわ、と見開かれた。