右手に剣を、左手に君を


獣のような咆哮(ホウコウ)が、森に響く。


妖の一体が、健太郎に向かっていった。



《斬ル!!》



妖は刀を振り上げ、健太郎の頭上高く飛び上がる。



「やれるもんなら、やってみやがれ!!」



健太郎は地上から妖をにらむ。


布都御魂を顔の前に構えた瞬間――。


ギィィィン!!


降ってきた妖の刀が、布都御魂にぶつかった。



「健ちゃん!!」



渚の悲鳴が響く。


しかし、相手より小さなはずの健太郎は、しっかりとその場に立ったまま……。



「うらぁっっ!!」



妖の刀を、はじいた。


手から刀を落とした妖は、慌てて飛び退くが……。


健太郎は、それを許さない。



「燃えろぉっっ!!」



健太郎が叫びと共に、布都御魂を振りかざすと。


赤い刀身が、実体をもった熱を、その身にまとう。


ゴウ、と空を斬る音と共に。


火炎が起こり、降り下ろされた剣と共に、妖の姿をとらえた。



《ギャアアアア!!》



この世のものとは思えない叫びをあげながら。


妖は、炎の中に消えていった。



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