右手に剣を、左手に君を


「へ、へへ……もう、何回も、

意識、

飛びそうになって……」


力なく笑う渚は、急に言葉を切った。



「渚……?」


「コウ、くん……?

そこに、いる、よ、ね……?」



どきりとした。


渚の感覚が。


俺から、遠くなっている。


まるで……。



「いるよ。聞こえるだろ?」


俺はいつもより、強めに声を張った。


渚はそれで、安心したように息を吐いた。


「帰ろう、渚。

な、帰ろう……

俺たちの、家へ……」


「うん……でも……」


「でも?」


「へ、へへ……

もう、無理みたい……」



にへ、と笑った渚の目じりから。


涙が一つ、落ちていった。


「な……何が無理だよ。

無理なもんか。

なあ、頑張れよ。

お前、俺と一緒にいてくれるんだろ?

うちの神社に、嫁に来てくれるんだろ?」


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