右手に剣を、左手に君を
「大丈夫……
私、今度は人間に産まれるよ。
それで、コウくんを探すね。
また、めぐり合えるまで……」
「それって、いつだよ……」
「わかん、ない……
もしかしたら、千年後かも」
「気の長い話だな……」
「ふ、ふふ……。
でもね。
コウくん。
時間が前にだけ進むなんて、一体誰が決めたの?」
「えっ?」
渚は、途切れ途切れの息で……。
いたずらっぽく、笑った。
「時間は……あらゆる方向に、流れてるから……」
「渚……
死ぬな。
なあ、待ってくれよ。
行かないでくれ……!」
俺の訴えは、虚しく。
渚の身体が、末端から。
光の粒になっていく。
それは、シャボン玉のように。
細かな泡となり、
天へ昇っていく。
俺は、無駄だとわかっていても。
彼女の身体を、思い切りきつく抱きしめた。
どこにも行かせたく、なかったから。