右手に剣を、左手に君を
「御津、急いで帰らなきゃいけない?」
「ん?荷物があるからな……。
そんなに急ぐってことはないけど。
どうかしたか?
何か、困ってるのか」
あれから何故か、野田の相談役になってしまった俺は、
高校時代のまんまの台詞を話した。
すると野田は苦笑して、
「あ、あの。
僕の友達に、会ってくれないかな?」
「友達?
今待ち合わせてるっていう?」
「う、うん。
ちょっと不思議な子なんだ。
ネットで知り合ったんだけど。
御津、不思議系得意だろ?」
「『神社の息子』だからか?
いい加減にしないと怒るぞ」
コラ、と叱る真似をする。
野田は、ひゃあ、と頭をかばった。
そう、妖の記憶が消えたってことは。
俺はあれ以来、シカトされることはなくなった。
だけど、あの戦いが俺に残した傷は、
あまりにも大きかった。
まず、人間不信に陥った。
それから、神社なんか継ぎたくないと、ダダをこねた。
それは、本当は今でも心の奥底では思ってるんだけど……。
歳をとったばあちゃんに、恩返しはしたい。
ただそれだけで、迷いながら勉強していた。