右手に剣を、左手に君を
「御津?」
「あ、あぁ……ごめん、ぼーっとしてた」
「熱中症かな?大丈夫?」
「大丈夫だよ。
それより友達は、いつ来るんだ?」
「もうすぐだと思うけど……」
心配顔の野田に笑って返すと。
駅のホームに、電車がつく音がした。
古い、田舎の駅の改札を出て。
ぽつりぽつりと、少ない乗客が階段を下りてくる。
「……!」
その中の一人に……
俺の目は、奪われた。
痩せていて、背の低い彼女は、野田を見つけて手を振る。
ぽてぽてと走ってくる様は、どこかで見覚えがあった。
「彼女だよ。
僕の友達」
野田に近づいてきた彼女は……。
俺を見て、固まった。
俺も、野田の横で、固まった。
その、おそらく同年代であろう、女の子は。
おそろしく、
渚に、
似ていた。