右手に剣を、左手に君を
「彼女、前世の記憶があるって言うんだ。
その記憶の風景を探っていたら、この住吉町に行き当たったんだって。
それでSNSサイトのプロフィールで知り合って……
是非、住吉神社を見たいって言ってるんだ。
あの、こちらは住吉神社のあととりで、御津恒一くん。
高校の同級生なんだ」
野田は、俺たち両方に、事情を早口で話す。
その女の子は、
茶色の髪に、茶色の瞳。
陶器のような、白い肌。
学校に行く時に変装した渚、そのものだった。
彼女は、俺の名前を聞いて、
ぷるぷるとその身を震わせはじめた。
「コウ、くん……?」
「……!!」
間違いない。
俺のことをそう呼ぶのは、
世界で一人しか、いない。
「渚……」
久しぶりに口にした、その名前に。
彼女は大げさに、うなずいた。