右手に剣を、左手に君を
身体が、勝手に動き出す。
俺の手は自分の荷物を捨て、
野田や通行人の視線も、
恥も、不信感も、
会えなかった時間も、全部捨てて。
彼女を、抱きしめた。
「ねえ、言ったでしょ?
すぐ、会いにくるって」
耳元で、鈴の鳴るような声がした。
「覚えてるよ……」
涙が、頬をつたっていく。
身体を離すと、彼女もまた、泣いていた。
呆然とする野田に、構わず。
彼女が、つま先で立ち、俺に寄りかかる。
俺たちは、どちらともなく。
何度も何度も、キスをした。