右手に剣を、左手に君を
「残るはお前だけだ。
観念して、成仏しろ」
俺は、妖の刀を草薙剣で防ぎながら、話しかけた。
多分、この妖は大昔の武者の霊だ。
戦(イクサ)で死に、さまよううちに妖になってしまったのだろう。
しかし妖は、俺の声など聞こえないようだった。
《神剣、ヨコセ!!》
無我夢中で、刀を振り回し続ける。
「しょうがねぇな!」
ギィン!
俺は一度、妖の刀をはじき、後退させた。
相手がひるんだ好きに、草薙剣に力を送り込む。
バチバチッと、刀身から金色の火花が散りはじめる――。
《神剣……ホシイ……ヨコセ!!》
態勢を立て直した妖が、一気に斬り込んでくる!
「天に還(カエ)れ!!」
斬られる直前、草薙剣を降り下ろす!
火花は天にまで伸び、巨大な雷になる。
それは轟音を轟(トドロ)かせ、妖の脳天に、体に、足下に、直撃した。
《グアアアアアアア……》
断末魔の叫びをあげながら。
妖は、消えた。