右手に剣を、左手に君を
「よし、一件落着」
健太郎が言った。
もう、三本とも神剣はそれぞれの体におさまっている。
そう、俺達の身体自体が、剣の鞘(サヤ)のようなものだ。
「渚、無事か」
渚を置いた地点まで、三人で戻る。
倒れた男女の横に座ったままの渚は、ぷるぷると震えていた。
「渚……」
立ち上がらせてやろうと、手を差しのべる。
しかし、渚は小さな身体全体で、それを拒絶した。
「……怖い……」
「渚……
大丈夫、もう妖はいないから」
「…………」
ゆっくりと、渚はうなずいた。
しかし……。
その瞳には、涙がたまったままだった。
「お前、神様だろ?しっかりしろよ」
「……怖いものは、怖いよ……」
「でも、千年前はあいつらと戦ったんだろ?」
そう言うと、渚は俺を見上げて、にらみつけた。
「思い出せないんだもん!
今、ずっと考えてたんだけど、どうやってたのか、よく思い出せない……」
言葉の最後の方は、涙にぼかされてしまい、よく聞こえなかった。
渚はすん、すん、と泣きながら鼻をすする。
「役に立ちたかったけど、できなかったの……
ただ、怖かったの……
ごめん、ごめんね……」
「渚……」
そうか。
こいつはヘタレ神様なりに、役に立とうとしてたのか。
俺は思わず、彼女の身体を抱き寄せた。
柔らかい、小さな身体は小刻みに震えていた。