右手に剣を、左手に君を


「ごめん。いきなりは無理だよな。

怖かったよな。

俺が悪かった」


「うぅ~……」


「ごめん。な?

大丈夫だから、神社に帰ろう」


「うん……」



ふす、ふす、と渚の息が胸に当たって。


何だか、切ないような変な気持ちになってしまった。



「あのー……俺達、こいつらを学校まで送りとどけるから……」


「恒一、手を出すのは勝手だが、海神の怒りに触れても知らんぞ」



健太郎と雅の声で、我に帰る。


頬がかぁっと熱くなり、思わず渚から離れてしまった。



「だっ、誰が神様に手ぇ出すか!

なぐさめただけだろっ?!」


「やー、スゲーいい雰囲気だったなぁ」


「うむ。邪魔して悪いな」


「だーかーらー!!」



二人は笑いながら、先に進んでいってしまう。



「コウくん……」


「こら、待てっ!
行くぞ、渚!」


「あ、はい……」



俺は渚の手をひき、倒れた男女を運ぶ二人のあとを追いかけた。



この時の俺の言葉が。



渚の心に、ひとつ傷をつけたのを知らずに。



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