右手に剣を、左手に君を


微妙な雰囲気のまま、自宅に戻って。


ばあちゃんが用意していた朝食をとった。


……それにしても、よく食べるやつだなぁ。


渚はさっきまでのシリアスモードはどこへやら。


だし巻き卵を、おいしいおいしいと平らげ、ばあちゃんをニンマリさせた。



「ところでお二人さん、今日は何か用事があるのかい?」



ばあちゃんが聞いてきた。



「別に……ないよ」

「ないですねぇ」



もしや、空亡や行方不明者を探しにいけとか、無茶を言い出すのだろうか。


しかしそんな予想は、外れた。



「じゃあ、買い物に行ってきなさい」


「えっ?」


「姫様の制服や学用品は用意した。

いつまでも力を使っていたら、姫様の身が持たないからね。

しかし、それ以外のものは、私みたいな年寄りじゃサッパリわからない」



ばあちゃんはそう言うと、懐から一万円冊を何枚か出した。



「恒一、姫様と一緒に服や下着、その他生活に要りそうなものを買っておいで」


「はぁ?マジかよ……
俺だって、女の子のモノなんか、わからないよ」


「私よりはわかるだろう。
つべこべ言わず、行けば良いんだよ」



くそ。やはり反論は却下か。


てか、こんな小遣い、俺だってもらった事ない。


俺だって、服とか靴とかほしいのに……。



「無駄使いするんじゃないよ。

姫様のものだけ。

領収書を忘れずにな」



ばあちゃんは俺の不満顔を見て、念を押した。


いくら渚が神様で、俺が人間でも不公平だ。


まぁ、でも……。



「お出かけしていいの?」



……渚が、キラキラ目を輝かせてる。


寂しそうにしているよりは、マシか……。




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