右手に剣を、左手に君を
「うひゃあ~」
バスに乗ること、40分。
それでも神社から一番近い大型スーパーに、無事たどり着いた。
渚は、その建物を外から見ただけで、感動でぷるぷるしている。
バスでは何回も停車ボタンを押して、怒られた。
「行くぞ」
「はいっ」
制服姿の渚は、ごく自然に、俺の手をとった。
「……ここでも、繋いでいくのか?」
「だめ?」
「……や、いいけど……」
正直、少し緊張する。
ここは都会の若者は見向きもしないようなところだが。
地元の若者には、唯一買い物ができるところなのだ。
休日のため、同じ学校の人間に見られる事は覚悟しなくちゃならない。
明日から学校で、何を言われるか……。
「……まぁ、いいか」
「???」
「行こう」
俺は思い切って、渚の手をにぎり返した。
こんな美少女と噂になるなら、男冥利に尽きるってもんだ。
案の定、買い物客がチラチラと渚を見る。
恥ずかしいだけだ。
嫌じゃない。
けど、緊張する……。
初デートの相手が神様って、どういう事だよ。
そう。
初めてだ。
女の子と手を繋いで、休日に私服で歩くなんて。
情けない事に、手のひらに汗がにじみだす。
しかし渚はそんな事、気にしていられないようだ。
「すごい、すごい」
初めて見るものばかりで、わくわくしたり、ぷるぷるしたり。
無邪気にくるくると変わる表情を見ていたら。
いつの間にか、緊張は和らいでいた。
他の人間の視線なんか、気にならなくなっていた。