右手に剣を、左手に君を
「まず……服か」
俺は、一番安そうで無難そうなテナントに、渚を連れていった。
「好きなの、何着か選べ」
「ふえっ。わかんない、こんなにたくさんあったら、正解がわかんない」
……それもそうか。
「コウくんに、任せます」
「はぁ?無理だよ。
せめて、どれが好きかくらい、ないのかよ」
店には何体か、マネキンがいる。
ガーリー、ナチュラル、お姉系、ギャル系、コンサバ……。
流行物を安価で扱うここは、たくさんの小さなコーナーでできていた。
「……できれば、はしたなくないものが……」
「露出が少ないって事か?」
「うん。あと、体にピタッとはりつくようなものはちょっと……」
「そっか。わかった」
それだけでも、助かる。
俺は適当に、ふわふわとしたワンピースを何着か選んだ。
ワンピースなら、上下の組み合わせを考えなくていい。
ただ渚は小さいから、長すぎないものを選ぶのが大変だ。
「んー……こっちだな。
これでいいか」
「はいっ」
「着てくか?」
「あっ、はいっ」
店員を呼び、適当な靴を合わせてもらい、渚は試着室へ入った。
着替える間に、店員が話しかけてくる。
「彼女さんですか?地元の子?めちゃくちゃ可愛いね~」
大学生のアルバイトみたいな女性店員は、やけになれなれしい。
「あはは……」
めんどくさかったので、愛想笑いで返しておいた。
「あのぅ……」
そうこうしていたら、渚が試着室から顔を出す。
店員がパタパタと戻ってきて、カーテンを開けた。
「わー、可愛い!」
店員は、大げさに言ったのかもしれない。
しかし……。
ふんわりとした、膝上までのワンピースは、本当に渚を可愛らしく見せた。
茶色の髪や白い肌に、紺色のワンピースがよく合っている。
「コウくん、どう、でしょうか……?」
「あぁ……うん、似合ってる」
思わず素直に答えてしまうと、渚は頬を染めて照れ笑いした。