右手に剣を、左手に君を
「コウくん、大丈夫?」
「あ?あぁ……大丈夫。うまいか?」
「うん、おいひいにょ~」
おいしいよ、だろ。
渚はもふもふと、ハンバーガーをかじっていた。
肉そのものは苦手らしいので、『お豆腐バーグサンド』なる、意味のわからないものを食べている。
まぁ、うまそうにしてるからいいけど……。
「疲れたな……」
「ごめんね、ありがとう」
「お前も疲れただろ?」
「うん。でも、楽しかったよ」
渚はにこにこと笑っていた。
こうしていると、本当に、普通の女の子みたいだ。
「おばあさま、親切だよね。
いつまでいるかわからない私に、こんなにしてくれて」
「……まぁな……」
お前は神様だからな、と言おうとして、やめた。
今日くらいは、普通の女の子として扱おう。
せっかく、楽しそうにしてるんだから……。
「また来ようね」
「あぁ……。またな」
俺の返事に、渚は頬を染めて微笑んだ。
しかし、もう二度と、渚とここに来る事は、なかった。
これが、最初で最後だった。