右手に剣を、左手に君を
「帰るか……」
「はい」
何とか買い物を終えて、バス停へ向かう。
するとその途中、会いたくない人物に会ってしまった。
「や、やぁ……」
そいつは私服で、こちらに挨拶をした。
笑おうとしているのか、奇妙な形に頬がひきつっている。
相変わらず汚いメガネをかけた、野田だ。
「……よぉ」
学校じゃないから、気が大きくなっているのだろうか。
まさかあちらから声をかけてくるとは思わなかったので、少し驚いた。
まさか、神社の前からついてきたんじゃないだろうな。
そう言いたくなるくらい、野田の目はねとねとと絡むように渚を見つめていた。
「……仲が良いんだね……」
「は?」
「御津君たちは、その、付き合ってるの?」
言われて、ずっと渚と手を繋いでいた事を思い出した。
少し悩むが、恥ずかしさより嫌悪感が先に立つ。
「あぁ、そんなようなもんだ」
俺は渚の意思を無視し、そう言った。
どうせ渚は、現代での『付き合ってる』の意味なんか、わかってない。
「へ、へぇ……。
どこで知り合ったの?
もう、色々、して……」
「うるせぇな、関係ねぇだろ」
思わず語気を荒げてしまった。
渚に好意をよせるのは勝手だが、色々エロい想像をされるのは不愉快だ。
野田は、びくりと肩を震わせる。
そして、口の中でもごもご言いだした。
「んだよ……」
「は?聞こえねえよ」
「お前だって、昔は俺と同種だったのに……」
……その言葉で、不快指数がマックスになった。