右手に剣を、左手に君を




どうして……?



どうして、私を起こしたの……?



そんな声が、頭に直接響く。



何事かと、崩れていく祠を見上げる。



すると……。



「げっ!?」



スローモーションのようだった。



龍神を封印していたはずの祠が砕けて、姿を現したのは……。



若く美しい、女だった。



女はまぶたを閉じたまま、岩の祠から地上に投げ出される。



俺は、思わず草薙剣を捨て……。



両腕で、降ってきた女を抱き止めた。



草薙剣が地上にぶつかり、ギィンと音を立てる。



瓦礫は彼女を避けるように、俺達の周りにがらがらと転がった。



その瞬間、剣や祠が放っていたまぶしい光は消えた。





しかし、俺は……。



それらより、あっさり腕の中におさまった女に。



視線も意識も、奪われていた。




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