右手に剣を、左手に君を
一歩、踏み出して。
野田の胸ぐらをつかんでやった。
「コウくん!」
渚が慌てる。
野田はビビって、持っていた買い物袋を落とした。
何か立ち直れなくなるくらいの事を言ってやろうかと考えていたら、
後ろからよく知った声がかけられた。
「あーっ!コウと野田なのだ!」
「健ちゃん!」
「げ、なんだよ」
はかったようなタイミングで現れたのは、健太郎と雅だった。
二人とも私服だ。
「コーウ。弱いものイジメすんなよー」
「は、してねぇよ」
「未遂だったな。
渚、今日は一段と素敵だね」
「そう?えへへ」
緊張した空気が一転、和やかになった。
俺は手を離す。
野田は、敵が大勢になったためか何も言わず、
さっさと逃げていってしまった。