右手に剣を、左手に君を
「……で、お前ら、何でいるんだよ……」
野田がいなくなった後、俺達はテクテクとあぜ道を歩いていた。
あんなやつに絡まれたせいで、バスが行ってしまったのだ。
次のバスを待つよりは、市電に乗った方がまだ早いと言う事で。
荷物を二人に分配してもらって、駅に向かっていた。
「さぁ。偶然だろう。なぁ、健太郎」
「おうよ。
決して、ババ様に言われて、無駄使いしないか監視してたわけじゃねーぞ♪」
「してたんだな!」
雅と健太郎は、顔を見合わせて笑った。
ニヤニヤした、悪い顔で。
「コウ、スゲー可愛かったなぁ」
「はぁ!?なんで俺が?」
「初々しいと言うか……中学生でも、もう少し堂々としてるぞ」
「うっ、うるさい!」
全部見られていたとは……。
御津恒一、一生の不覚。
「渚、楽しかったか?」
「うん!」
……そりゃあ、良かったな……。
恥ずかしさで死にたくなった俺に、渚が声をかけた。
「コウくん」
「ん?」
「あの野田君て子、コウくんと昔、何かあったの?」
「…………」
健太郎と雅が、視線を送りあうのがわかった。
「……別に……」
俺は、それだけ返した。
他の二人も、黙っていた。