右手に剣を、左手に君を


草薙剣をにぎりしめ、その廃墟に踏み入れようとした時……。



「……!!」



突然、俺達を突風が襲う!


いや、違う。


これは、羽根……?



なんとか目を開けると。


かばった腕の間から、黒い羽根が舞うのが見えた。



「くそっ!」



健太郎が布都御魂を振り、炎を起こす!


ゴウ、という音と共に。


炎は羽根を飲み込み、灰に変えた。



「これは……」


「来るぞ、用心しろ」



足元の灰を確かめる余裕もなく、雅が警戒の声を上げた。


俺達は廃墟に向かいなおす。


するとその中ではなく背後から、声が聞こえた。



「……なぁに、あなたたち……?」


「……!!」



驚いて、振り返る。


背後の、大木の枝から。


二体の妖が、こちらを見下ろしていた。



いつの間に――。



俺達の背中に、冷たい汗がつたっていく。



これは、ヤバイ……。


今までの妖とは、ケタ違いだ……。



肌にピリピリと感じる妖力で、それがわかる。



「あら、三人ともイケメンじゃない」



一体の妖が、口を開いた。


真っ白な長い髪から、白く尖った耳が出ている。


金色の目はつりあがり、白いまつげにふちどられていた。


着崩れた振袖のような衣装。


その尻からは、白くふさふさとした尾が、


九本、出ていた。



「九尾の狐……」



雅がつぶやく。


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