右手に剣を、左手に君を


「三剣士?あー、あの昔空亡様を封印したっていう?」



玉藻が迦楼羅に聞く。


迦楼羅は静かにうなずいた。



「お前達は、空亡の仲間か」



声をふりしぼる。


妖の二人は冷ややかにこちらを見つめた。



「仲間って言うか……ねぇ?」


「私達は、空亡様の配下だ。

人間ごときが、あの方の名前を口にするな」



チッと健太郎が舌打ちをする。



「魑魅魍魎の王かなんか知らないけどさ、迷惑なんだよ。

住吉の行方不明者達はどこにやったんだ。

病人達は、どうすりゃ治るんだよ!」



野田ならすぐ逃げ出すような、健太郎の大声。


しかし、二人の妖の耳には、全く響かないようだった。



「……バカねぇ。
その者たちの事は諦めなさい」



玉藻の冷たい声が響く。



「どうせ空亡様が完全に復活されれば、人間達は全員死ぬしかないのよ。

それが遅いか早いかというだけ」


「な……っ」



何と言った?


空亡が完全復活すれば、人間は全滅する?



「……空亡は、今の時点では、完全に復活していないという事か」



ぽつりと言うと、迦楼羅が玉藻の頭を叩いた。



「余計な事を言うな」


「いったぁい!このバカぢから!」



雅と、健太郎を見る。


二人とも同じ意見らしく、黙ってうなずいた。


空亡が完全復活する前……今しか倒せる時はない。



「空亡の元へ、案内してもらおう」



雅が十束剣に力を送る。


俺と健太郎も、神剣を構えた。



「まさか、やるつもりなの?」



玉藻が目を丸くする。



「愚かな……。我らを倒して、空亡様も倒すと言うのか」



迦楼羅が、くつくつと喉を鳴らして笑った。



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