右手に剣を、左手に君を
「くそっ!」
「同じ手がきくかっ!」
俺達はそれぞれの剣で、羽根を切り裂いた。
「そんなものに翻弄されてるようじゃ、どうしようもないわね」
玉藻が呆れて言う。
「誰が、翻弄されてるって!?」
健太郎が叫ぶ。
「本気で行くぜ!!」
布都御魂が赤く輝き、灼熱の炎を産み出す。
「燃えろっっ!!」
ゴオォォォッ!!
火炎が羽根を燃やしながら、渦となって迦楼羅を飲み込む!
だが――。
迦楼羅はその翼で、自らの身体を覆い隠す。
それは鉄の盾より頑丈で……。
「……笑止」
バサ、と翼がはためく音がする。
「……マジかよ……」
健太郎がうなった。
そのこめかみを、一筋、冷たい汗が流れていく。
健太郎の火炎は、迦楼羅に小さな火傷すら、負わせる事ができなかった。
「火遊びか?
本当の炎というものを教えてやろう!」
迦楼羅が、笛を構える。
口を付け、息を吹き込んだ瞬間――。
「避けろ!!」
「!!」
迦楼羅の笛から出た炎が、健太郎を襲う!
俺の声も届かないほど、早く――。
「ぐわあぁぁっ!!」
「健太郎!!」
健太郎は吹き飛び、木の幹に背中を打ち付け、倒れた。
布都御魂が、主の意識と共に空中に消えていった。