右手に剣を、左手に君を
草薙剣に、力を送る。
それは俺の力に答え、金色の輝きをまとった。
「ふっ!」
息を溜め、一気に吐き出す。
同時に、草薙剣で玉藻の姿をとらえた――
――はずだった。
「!?」
次の瞬間、草薙剣は空を斬り、バランスを失う。
そこにいたはずの玉藻が消え、目の前には木々しか見えない。
「恒一、上だ!!」
「!!」
雅の声の方に、とっさに飛び退く。
ドスリ!!
一瞬前に俺がいた場所に、玉藻の爪が突き刺さった。
空中に飛んでいたらしく、振袖の裾が遅れてフワリと地面に着く。
「ぐ……っ!」
完全に避ける事はできなかった。
服を切り裂かれ、胸に傷がついている。
そこから出た血液が、みるみる服を赤く染めた。
「逃げるぞ、恒一!ここは退け!」
「くそ……っ!」
雅の声で、我に返る。
逃げなければ。
健太郎を連れ帰り、早く手当てをしなければ。
雅に視線を送る。
雅は十束剣を構えた。
「……食らえ!!」
声と共に、翡翠色に輝く十束剣を右へ左へと振り回した。
三日月形の衝撃波が、いくつも二体の妖の方へ飛ぶ!
そのすきに、俺は健太郎の元へ走り出した。
「健太郎!!」
「コウ……っ」
健太郎はボロボロだが、何とか息をして、意識を取り戻していた。
「逃げるぞ、つかまれっ!」
「俺より……、渚を……っ!」
そうだ!渚……!
どこへ隠れた?
辺りを見回していると……。
「っ、あ……っ!!」
雅のうめき声が聞こえ、思わずそちらを振り向く。
雅は攻撃を避けた迦楼羅の羽根を、肩や足に受けてしまったようだ。