右手に剣を、左手に君を


ザァ……ッ!!



海の波の音が聞こえた。




「なに……っ?」



迦楼羅の驚く声が聞こえる。



熱さを感じなくなったのは、その後だった。



そっと目を開ける。



俺達を飲み込んだはずの炎の波が、欠片も残さず消えていた。



その代わりに、木々が雨に降られたように濡れている。



「……渚……?」



お前がやったのか?


聞こうとするが、渚は相変わらず俺の腕の中で震えていた。



「水を操る能力者……?」


「そんなの、人間にいるの?神剣もないのに」



迦楼羅と玉藻が、渚の姿を確かめようと手を伸ばす。


死にかけた俺達は、渾身の力をふりしぼり、渚の前に立った。



すると……。



突然、廃墟の方から声がした。



《……迦楼羅……玉藻……》


「空亡様!!」



渚の背が、びくりと震えた。



空亡。



確かに、その名が呼ばれた……。



しかし、気配は感じない。



ごくりと唾を飲み込み、廃墟の方を見る。



今にも崩れて潰れそうな、その奥から。


声だけが、した。



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