右手に剣を、左手に君を
何だよ、勝手にやっといてその顔は……。
こっちの方がはるかに恥ずかしいんだけど。
心臓が、おかしな音を立てている。
妙な雰囲気を察したのか、渚が頑張って口を開いた。
「あ、あとは……胸の傷?」
「って、まさか……」
「同じようにさせてもらえれば、痛みが引くから……」
「ままま、待てっ!大丈夫、全然痛くねぇからっ!」
うぐっ。
大きな声を出したら、傷に響いてしまった……。
「コウくん、大丈夫?」
「だ、大丈夫……お前、そんな事できたのか」
「ん……。
何となくやってみたら、できたの」
渚は、こくりとうなずいた。
「まさか、雅や健太郎にも……」
聞くと、今度はぷるぷると首を振った。
「雅も健ちゃんも、応急処置には、手をあてたの。
急いでたから。
コウくんもだよ。
でも手だと、一気に霊力が出ていっちゃうから、しんどいの。
今あの二人は、それぞれの家で休んでるよ」
「無事なのか……」
「うん。二人とも、命に別状はないよ」
「そっか……良かった……」
安堵のため息が漏れる。
話すうちにやっと、二人の妖と戦って、傷を負った事を思い出した。
「気を失ってから……どれくらい経つ?」
「3日」
「3日か……どうやって命拾いしたのか、全然覚えてない……」
あの戦いを思い出すと、身震いしそうだ。
俺達は全く、敵に歯がたたなかった……。