右手に剣を、左手に君を
ゆっくり、自分の身体を点検してみる。
身体のいたるところに包帯が巻かれていた。
きっと、他の二人もそうなんだろう。
しかし、気を失うほどの攻撃を受けたわりには、
傷はほとんどふさがっているように思えた。
痛みは、残っているが……。
「俺達、どうやって帰って来たんだ……」
「えと、コウくんの“すまほ”で、ババ様に連絡して、迎えに来てもらったの」
ほう。
そういえば、見せろ見せろとあまりにうるさいから、一回触らせてやったんだっけ。
一応使い方を教えておいて良かった……じゃなくて。
「じゃなくて、お前は気を失わなかったのか?」
「えっ?覚えてないの?」
「何を?」
渚は意外そうな顔をした。
そう言われても、本当にわからない。
渚はゆっくり、口を開いた。
「……草薙剣が、守ってくれたの……」
「草薙剣が?」
「うん。
爆発が起こった瞬間、コウくんの右手の草薙剣が、ぐぁーって光ったの。
んで、皆はどぉーんってなったんだけど、草薙剣が私の周りに、ぷわぁーって光の膜を作ってね、
私だけ、無傷だったの」
ぐぁーで、どぉーんで、ぷわぁー???
全然、伝わってこない……。
「だから私、コウくんが助けてくれたんだとばかり……」
「いや、剣をにぎったままだった事すら、よく覚えてない」
「……じゃあ……」
渚は、何か言いかけた。
だが、言葉にする事はなかった。
多分、俺と同じ事を思ったのかもしれない。
草薙剣に残る先祖の魂……つまり忠信が、渚を守ってくれたんじゃないかと。
しかし、なんの根拠も証拠もない。
ただ渚は、切なそうにまつ毛を伏せた。