右手に剣を、左手に君を



残された俺達に、重い沈黙が落ちる。



「修行か……そんな余裕、ねえよな……」



健太郎が悔しげに言う。


実は俺達は小さな頃から、神剣を操る訓練をそれぞれの親に受けてきた。


俺は、ばあちゃんからだけど。


しかしどの身内も、子供があまりに人間離れした強さを身につける事を恐れた。


それは、また新しい争いの火種になりかねないから……。


俺達はそんな思惑はまだわからなかったものの、

並みの人間よりはよっぽど強い事を自覚し、満足していた。


実際に、玉藻や迦楼羅に会うまで、

どんな妖にも負けた事はなかったのだ。



「あの……」



渚が、口を開く。



「何だ?」


「私が……記憶を、取り戻します……」


「えっ?」



俺達は目を丸くした。



「ぼんやりと思い出したんだけど……。

たしか三剣士は、今の皆と同じくらいの力だったと思うの。

それを私の力で、足りない分を補ってたんだと、思う」


「渚……」


「怖いなんて、言ってられないよね。

私、ちゃんと思い出せば、
そのへんの事、もっとちゃんとできる気がするの」



渚はしっかり顔を上げ、俺達を見た。


そして……。


俺の方に、顔を向けた。


その青い目には、今までになかった光が宿っていた。



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